津波避難ビルとは?もしも津波が起こった時に逃げるための建物を知っておこう
万が一地震が発生した場合、揺れや火災による被害のほかに警戒しなければいけないのが津波です。今後発生する可能性が高いといわれている南海トラフ地震でも、広い範囲での津波発生が懸念されています。
そんな津波が発生した際に、命を守るために利用できるのが「津波避難ビル」です。この津波避難ビルがどういったものなのか、また、どこにあるのかをしっかり把握して、日ごろから津波対策を意識していきましょう。
津波避難ビルとは?
「津波避難ビル」とは近くに高台がない地域での、津波からの避難場所として指定される建物のことです。津波による被害が想定される地域内でも特に、地震発生から津波の到達までの時間的猶予がなかったり、地形的な理由があったりして津波からの避難が困難であると想定される地域で適用されます。また、津波から逃げ遅れた人や遠くまで避難することが難しい人にも、少しでも安全な場所を確保するために指定されています。
ただし、津波避難ビルはあくまでも高台へ逃げられない場合の緊急かつ一時的な避難施設です。そのため、津波避難ビルがあるからといって、そこへ避難する人の命の安全が確実に担保されるわけではなく、津波の波力自体を低減させるものでもないことは頭に入れておきましょう。
また、津波警報が解除されるなど、安全が確認でき次第、自宅や地域の避難所へ移動する必要があります。津波避難ビルは避難所ではないため、基本的に食料などの備蓄も行いません。
津波避難ビルに指定される条件や基準
津波避難ビルは既存の建物を活用することができますが、基準や条件を満たしていることが前提です。
その条件は、構造的なものと位置的なものの2つがあります。
津波避難ビルに指定される【構造的要件 】
津波避難ビルに指定される建物は、耐震性能と構造を元に安全が確認されていなければなりません。まず耐震性能については、次の2つのうちどちらかの条件を満たしている必要があります。
1つは、耐震診断によって耐震安全性が確保されていること。
もう1つは、昭和56年施行の建築基準法における耐震基準である「新耐震設計基準」を満たしていることです。
そして津波避難ビルに指定される建物の構造については、鉄筋コンクリート(RC)造または鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造であることを原則とし、想定浸水深に応じて階数や津波の進行方向に対しての建物奥行きを考慮します。想定浸水深は地域によって異なるため、例えばこの想定浸水深が2mである場合は、3階建て以上で津波進行方向の奥行きが9m以上の建物が津波避難ビル選定の条件になります。
この場合、3階以上の階に屋上や通路、階段室など一時的な退避ができる場所があり、終日一時退避ができる上に無料で使用可能なことも条件です。そのため、観光客も含めた地域の人が利用できるように、日常的にも使用できる建物であることが多いです。例えば、体育館や地域のコミュニティセンターをはじめ、ショッピングモールやホテル、マンションなども津波避難ビルに指定されることがあります。
津波避難ビルに指定される【位置的要件】
位置的要件とは、津波避難ビルの指定が必要な地域を決める基準です。過去に起こった津波の浸水実績や津波のシミュレーションなどによって作られた津波浸水予測図、津波ハザードマップを基にして津波浸水予想地域を抽出します。そして、この津波浸水予想地域に基づいて自主防災組織または町内会などにより避難対象地域を設定します。
次にこの地域から津波到達予想時間・避難時の歩行速度から求められる避難可能範囲を除いて避難困難地域を選出します。そして、この避難困難地域にある構造的要件を満たす建物が津波避難ビルの候補になります。この建物の選定には、地域の意見や意向も取り入れられます。
ハザードマップで近くの津波避難ビルがどこにあるかチェックしておこう
万が一地震が起こって津波が発生し、本当に避難しなければならない状況になった時に、津波避難ビルがどこにあるのか知っていなければ命に関わる可能性もあります。自宅や職場、学校などが津波の被害にあう可能性がある地域ならその危険度がどの程度なのか把握し、近くのどの建物が津波避難ビルに指定されているか確認しておきましょう。
津波避難ビルは、各自治体の津波ハザードマップに記載されています。津波ハザードマップは各自治体のサイトや広報誌などから確認することが可能です。また、津波避難ビルのマークがついている建物が近くにないか、日ごろから注意して見てみるのもいいでしょう。普段利用しているショッピングモールも津波避難ビルに指定されているかもしれません。
津波ハザードマップには、浸水範囲や避難場所、避難路などが記載されており、その地域にいる人が迅速に避難できるようにするために作られています。そのため、津波避難ビルを確認しながらどこに逃げたらいいのか、どのルートを通ればいいのか家族で確認しておくことが大切です。
津波避難ビルを知ってもしもの時に命を守れるようにしよう
今回は、津波避難ビルについて紹介しました。地震が発生して津波が起こった場合は高いところへ避難することが大切です。しかし、すぐに高台などへ避難できない場合は津波避難ビルに逃げるようにしましょう。耐震性能などの条件を満たした建物が津波避難ビルに指定されており、一時的に津波から身を守るために役立ちます。いざという時にスムーズに津波避難ビルへ逃げられるよう、近くのどの建物が津波避難ビルに指定されているのかハザードマップなどをチェックして把握しておくことが大切です。
津波から命を守るためには、津波避難ビルへ逃げることも大切ですが、避難の際に注意しておきたいポイントも知っておきましょう。そこで次の記事では、津波から命を守るために知っておきたいことについて紹介します。本記事とあわせてチェックしてくださいね。